「岡山たからもん」パネルディスカッション岡山の本質的な価値を発信し、ファンづくりにつなげよう。

県民一人ひとりの中にある「岡山のここが好き」を探り、新たな岡山の魅力づくりを目指すプロジェクト「岡山たからもん」。
3月8日、山陽新聞社さん太ホールに経済団体代表や若い世代の実業家ら5人が集い、約170名の来場者と「ファンと共に創る岡山の未来価値」について考えた。
(文中敬称略)
  • 岡山商工会議所会頭
    松田 久
    1952年、岡山県生まれ。旧三井銀行を経て1987年に両備システムズ入社。両備ホールディングス社長を経て2019年6月から副会長。同年4月に岡山商工会議所会頭に就任。岡山県商工会議所連合会会長。
  • 岡山青年会議所理事長
    石井 聖至
    1982年、岡山県生まれ。旧岡村製作所を経て2010年に石井事務機センター(現ワークスマイルラボ)入社。21年から専務取締役。13年に公益社団法人岡山青年会議所に入会。22年1月に理事長に就任。
  • インフルエンサー、実業家
    春木 開
    1988年、岡山県生まれ。神戸大学在学中に起業。SNS総フォロワー数100万人超のインフルエンサーであり、会員数700人超のオンラインサロンの主宰、美容クリニック経営など多事業を展開する実業家。
  • デザイン会社代表
    鈴木 宏平
    1984年、宮城県生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒。2011年に西粟倉村に移住。2015年、nottuo株式会社設立。ブランディングデザインを軸に建築、プロダクト、グラフィック、webと全領域を手掛ける。
  • おかやま観光特使
    平野 絢子
    1987年、岡山県生まれ。東京都在住。2020年にエコをテーマにした全国的な女性の活動団体「ecoco」を立ち上げ、地域活性とウーマンエンパワーメントを推進。おかやま観光特使としても活動中。

―初めに皆さんの「岡山のここが好き」をご紹介ください。

松田岡山は日本のおへそ、というのが私の持論です。ふだんは目立たないけれど、日本にとって実はとても大切な存在だと思います。1億年前からほとんど動いていない強い岩盤があり、自然が豊かで食べ物がおいしく、東西南北どこへ行くのも便利。ゆったり暮らせるけれど田舎過ぎず、まことに居心地がいい。岡山はすべてがそろっている。

石井非常にバランスが取れているまちです。住みやすさを数値で表すことは難しいけれど、気候やアクセスなどあらゆる面で住みやすい。特に私は岡山の「人」が好きで、少しシャイで奥ゆかしさがありながらも、懐に入ったときの温かさをものすごく感じさせる。もっと他県に自慢していいと思います。

春木僕は18歳から県外で生活していますが、都会に比べて岡山は人や物を大切にする。僕のことも熱心に応援してくれて、すごく温かい。岡山で育ったことを誇りに思います。

鈴木働くことと暮らすことのバランスがとてもいいことです。パソコンから目を離したときに窓の外に広がる景色は、東京に居ては望めません。西粟倉村は人口およそ1400人に対して移住者が100人以上いる村で、田舎にわざわざ来てベンチャーを立ち上げるような鼻息の荒い人たちがいることも僕にとっては刺激的で面白い。

平野好きなところは岡山の多様性です。果物がおいしく、自然が近く、まちにアートが点在している。空と鉄道の便が良い。エコへの取り組みが積極的な自治体があるのも誇らしいです。

岡山を日本一 住みたいまちへ

―昨年、岡山商工会議所創立140周年で、2030年に向けたまちづくり提言『日本一 住みたい「ウエルビーイングな都市(まち)」おかやまへ』を掲げました。その狙いは。

松田私が岡山商工会議所の会頭になって最初に出した標語が、「稼ごう、守ろう、続けよう」。収入が得られる仕組みをまちの中心に作り、周辺部の歴史や伝統、環境もきちんと守る。それがサスティナブル(持続可能性)なまちづくりになると考えました。3つのバランスをとればおのずと住みやすいまちになり、人口減で東京の過疎化が進むような時代に「岡山はいいまちだよね。地震もないし、家族が安心して住めるよね」という評価につながっていくのではないかと考えています。

故郷への愛着は、子ども時代の体感と体験から

―岡山の価値をどう考えますか。

石井岡山青年会議所では今年度、岡山をもっと盛り上げようと「チャレンジ岡山」をテーマに10ある委員会のうち5つをまちづくりに充てています。恒例となった「うらじゃ」に加え、岡山の多様性を広げるためにもっと何ができるか。今年は子どもに直接的に岡山の良さを伝える活動をしていこうと思っています。例えば岡山は晴れが多く天体観測に向いていて「天体王国」と呼ばれている。それを宇宙に関連した催し物につなげられないかとか。このまちにはワクワク楽しんでいる大人がたくさんいるなぁという姿を子どもたちに見せたい。

鈴木例えば、都会に出たけれどやっぱり戻りたい、と思う感覚があるかどうか。「故郷に大切な思い出がある」「面白い大人たちがいた」「たくさん可能性を感じた」となるような体験や体感をどれだけ提供していけるかが重要でしょう。

平野東京にいると、移住先情報をたくさん目にします。その中でなぜ岡山に住むのかという理由の発信が弱いかなと。岡山の価値が届くような伝え方が必要だと感じています。

松田岡山の価値はどこにあるのか。私自身は、地域の歴史の中に価値があると信じています。なぜこのまちが今こういうふうにあるのかを追求するとすごく面白い種が出てくる。例えばなぜ倉敷市児島でジーンズなのか。西大寺の観音院でなぜはだか祭りが起こったのか。歴史をさかのぼって探っていくと、ジーンズや祭りの価値を上げるようなものが発見できるんじゃないでしょうか。

鈴木地元であれ会社であれ固有の「らしさ」が必ずあります。そこを発見し整理してちゃんと伝えること。それがブランディング。100人中95人は振り向かなくても、5人に「大好き!」と言ってもらえる。そんなファンとどう出会っていくか。長期的な視点で時間をかけてブランドを育て、ファンと信頼関係を築いていけるかどうかが成功の秘訣だと考えます。

地方こそSNSで発信を

―発見し整理して伝えていく。そのためには発信の手段が大切になりますね。

春木僕自身、特別な才能もお金も人脈もなかったけれど、SNSに本気で取り組んだ結果、広告費をかけずに集客と求人のすべてを完結させて事業を行ってきた。岡山でフォロワー10万人というと、東京の何倍もすごい。地方は競合優位性が高いので、SNSをやらないのはもったいないです。

平野私は主にインスタグラムで発信をしていますが、目的別に複数のアカウントを作って使い分けています。岡山の観光特使としての発信、エコ活動のための発信、自分の個人的な発信。見てくれる人の興味や関心にフォーカスして伝えていく。観光特使としては、私の発信を共有することで岡山ファンをつなげられたらと思って発信しています。

春木ファンづくりで僕がすごく意識しているのは、うそをつかないこと。自分が本当にいいと思ったものだけを発信する。「家族や友人」と同じように信頼され頼りにされる存在であるように意識して発信しています。

石井お二人が言われる通り、やはり目的ですよね。どんな人たちにどう知ってもらいたいのか、目的を明確にすれば使い方が変わってくるのかなぁと。青年会議所のSNSもそう考えて取り組んでいきたいと思います。

「類友」と「熱量」の掛け算が、価値を伝える

―今後、岡山ファンを増やしていくためにはどうすればいいでしょうか。

平野岡山に住んでいる人たちが岡山のいいところをあらためて感じて共有して伝えあうのが必要だなと感じます。岡山在住の友人に「なんで岡山が好きなの?」と聞くと、「災害が少ないから」。それ以外には?と聞くと、言葉が詰まってしまって「おいしいものもあるし」。さらに深堀りすると、「あのパン屋さんが好きで週に1回は行っている」とか「最近できたあのカフェがいい」とか、身近なことがいいんだなぁと感じる。そういったものを外に発信することも大切。岡山の観光特使として、私自身も岡山の魅力を再発見してPRに生かそうと思います。

鈴木類友と熱量の掛け算が、価値を伝えるうえで効果が高いという話があるように、まずは岡山に住んでいて愛着の強い人が、積極的にその熱量を友達などに伝えていく。相手の心に火をつけるきっかけになって、それが伝播し、愛着が醸成されていくのではと思います。

春木春木開を使ってください!(笑)やっぱり地元愛がある人っていいじゃないですか。僕も地元に感謝をしているので、できることは全力で岡山に貢献していきたいです。

石井身近な人に熱量を持って伝えていく。岡山の魅力を熱く伝えていくことが大切だし、まさに我々の役目だなと感じました。

松田ロシアがウクライナに侵攻して、逃げ惑う人たちの姿を見て、このまちを愛して暮らしてきた人たちが追い出されていくことの悔しさとか悲しさとかを世界中の人たちが感じている。そこに住んでいるということをもっと誇りに思わなければだめだと痛感しました。コロナ禍になってから、近場を訪ねてみたのですが、すごい!面白い!きれいだ!と感じることが多かったです。それぞれのまちや村に歴史があり、地元の人が誇りを持って住んでおられる。その姿から、自分が住んでいるまちの良さを、熱量を持って人に伝えていくことが何よりも大事だと。それがファンを呼び、連ねていくことになる。商工会議所としては、まずはみずから岡山を深く知り、それを確固たる価値にして、近い人から順番に熱く伝えていく。「岡山っていいところだよね」「行ってみたら本当に良かった」「住んでみようか」となっていくように取り組んでいきたいと思います。

岡山たからもん
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