6次化に活路を見いだす
牧場の3代目

倉敷チーズ工房ハルパル

三宅春香(27歳)

3年がかりで実現したチーズ工房。

 65年続く牧場の3代目は27歳。両親は365日「いい牛乳を搾ること」に情熱をかける酪農家。牛の世話に明け暮れ、家族そろって遊びに出かけたことなどほとんどないが、一度も不満に思ったことがない。家族全員、牛が好きで、大事にしてきた。
 高校時代に自然な選択として「家業を継ぐ」と決めた。酪農学園大学(北海道江別市)を卒業後は帯広の牧場でチーズ作りも学ぶ。実家の牧場に戻って働きながら3年がかりでチーズ工房をオープン。用途地域の制限などいくつもの壁に阻まれ、体重が10キロ減るほど悩んだ。乗り越えられた源泉は、「やりたい」という情熱。くじけそうになるたび、自分の本気が試されていると感じた。「補助金にも詳しくなったし、自信を持てました」と振り返る。

チーズは酪農家と消費者が
直接つながる機会。

 工房でのチーズ作りは週3回、朝8時から搾りたての牛乳を使って一人で行う。流通に回す量が作れないため、販売のメインはイベント会場での販売。週末になると売り切れごめんの量を車に積んで会場に向かう。今はまだ「売れる喜びより、チーズを通して牛や酪農に興味を持ってほしいという気持ちが強い」と言う。イベント販売は、酪農家と消費者が直接つながるコミュニケーションの機会。「あー知ってる」と言われることが増えたのが何よりうれしい。

美観地区にチーズ専門店を
出す大きな夢。

 人口減、円安、物価の高騰。酪農を取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。どんなに良い牛乳を作っても、酪農一本で食べていくのは難しい時代。今後は牧場を続けながら「差別化が図れて自分で値段を決められる」6次化に力を入れていく。チーズを軸に、ソフトクリームの開発も進めたい。10年後には倉敷美観地区にチーズの専門店を開きたいという大きな夢もある。消費者とつながり、喜ばれる製品を提供して地域に根差した事業にしていく。 「生き物が相手なのでなかなか休みはとれないし、頭の中はずっと仕事のこと。好きな仕事なのでストレスではないけれど、リフレッシュはできてないかも」と笑う。

岡山たからもん
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