電気配線のツールを自作して勉強する西川さん

東京で最新の防災を学び、
故郷に恩返しを
西川 奈美穂さん(23歳 東京都)

「今できることを精いっぱいやる」

 大工の祖父を間近に見て育ち、建築に関心が深まった。高校で大学工学部への進路を決め、受験生の正念場を迎えた高校3年の夏。西日本豪雨で真備町の自宅が被災した。変わり果てた風景、鼻を突く悪臭、親しい人が亡くなった悲しみ…。みんなが片付けや掃除に追われる中、自分は勉強を続けていいのか。進学せずに就職するべきじゃないのか。家族に促され、高校の補習授業を受けに行ったものの、普通に勉強する級友たちを見て、教室に入ることができず、泣き崩れた。なんとか気持ちを切り替えられたのは、「今できることを精いっぱいやろう」という教師の励ましによる。
 翌春、香川大学創造工学部に進学。1年生で防災士の資格を取り、2年生で防災士クラブと機能別消防団に参加。被災地でのボランティア活動や、小中学校などでの防災教室で啓蒙(けいもう)活動に取り組んだ。「被害が小さく、家族も失わなかった自分が、被災者の声を代弁していいのか、最初はすごく悩みました。でも、勇気を振り絞って話したら、みなさん真剣に聴いてくれて、防災の大切さを意識してくれる。自分なりに伝えていくことが大切なんだと思いました」
 大学で建築・都市環境コースを専攻。最新の防災の仕組みを取り入れた高層建築に携わりたいと考えるようになった。昨春、東京のゼネコンに就職。設備の図面チェックや品質管理を担当し、ヘルメットと作業服で建築現場を回る。「東京へは学びに来ました。いろんなことを吸収して岡山に持ち帰りたい。そして、仕事とボランティア活動を両立し、豪雨のときに助けてもらった恩返しをしたい」。真備町は温かく、豊かで、空が美しい。毎日、大好きな故郷を想う。

母校矢掛高等学校での防災教室=2022年6月

岡山たからもん
お問い合わせ
山陽新聞社営業局広告本部 岡山市北区柳町2-1-1
電話086−803−8013 受付時間 平日10時~17時